Berkley Prime Crime 343p
ガス灯またたく街路に馬車が行き交う20世紀初頭のニューヨーク。3年前、医師だった夫トムを殺人事件で亡くしたサラ・ブラントは、裕福な実家に戻らず、助産師として働いて、ひとりでつつましく暮らしていた。サラは、亡き夫の事件の捜査を通じて、フランク・モリーという警官と知り合った。警官フランクは、妻を亡くした後、障害のある幼い息子ブライアン、未亡人である自分の母とともに暮らしていた。
ある夜、サラは、良家出身のリチャード・デニスとオペラを見に行く。妻ヘイゼルを熱病のため亡くしたリチャードは、自分が無関心だったために妻を死なせてしまったのではないかという自責の念に駆られていた。ヘイゼルは生前、マルベリー通りにある貧しい少女たちのためのシェルターでボランティア活動に打ち込んでいた。リチャードはサラに、亡き妻を少しでも理解するため、シェルターへの同行を依頼する。
日曜日の午後、サラはリチャードとともにシェルターを訪問する。そこで、伝道師だった亡夫の意志を継いでシェルターの運営を続けているミセス・ウェルズの献身的な生き方に感銘を受け、ボランティア活動をしようと決心する。
翌週の日曜、フランクは、女性の遺体が見つかったという呼び出しを受けて市役所の向かいにある公園に赴く。現場に着いたフランクは愕然とする。遺体のそばに残された、古ぼけたみっともない帽子に見覚えがあった。サラの帽子だ!
20世紀初頭の若い国、アメリカを舞台に、さまざまな歴史を背負った人々の姿が生き生きと描き出されている。なかでも、貧民層の少女たちの姿と移民同士の確執がずしりと残った。巻末の解説によると、著者はイタリア系移民の系譜につながるとのこと、その経歴が十分に生かされた作品である。セツルメント活動に関連して、シカゴのハルハウスの名が出てきたことも、個人的にはとても嬉しかった。
富裕層出身の女性としがない警官という組み合わせは、アン・ペリーを思い起こさせる。主要な登場人物のほとんどが配偶者を亡くしている。亡くした経緯は事件あり、病死ありとさまざまであり、読み応えのあるサイドストーリーがいくつも展開されており、それもまた、物語としてのおもしろさに奥行きを加えている。
著者がかつてはヒストリカル・ロマンス作家だったためか、テーマは重いものの、人間関係がうまく描かれており、会話にも味があって、読みやすい作品に仕上がっている。ミステリとしても骨格がしっかりしており、最後まで楽しめた。注目したい作家である。
本作は、ガス灯ミステリ・シリーズ第5作。本国では毎年新作が出ている人気シリーズであり、第2作 "MURDER ON ST. MARK'S PLACE" は2001年MWA賞ペーパーバック賞候補に挙げられた。2007年6月には第9作 "MURDER IN CHINATOWN" の刊行が予定されている。シリーズを通して読んでみたい。
著者のサイト http://www.victoriathompson.com/
2007年12月23日
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