ISBN: 1843910861
裕福なコヴェントリー家にひとりのガヴァネスが来た。その名はジ−ン・ミューア。謎めいた彼女に男たちは魅了され、女たちは憧れ、嫉妬する。彼女をめぐって兄弟がいがみ合い、血が流れる。金髪白い肌、甘い声、ほっそりした体つき、優美な身のこなしに加え、その生まれには謎が秘められていた。美貌の裏に隠された真実の顔とは……。
まさに昼メロといった(見ていないが)B級ロマンティック・サスペンス。一人の作家がこれほど正反対の作品を書けるとは信じられないくらいだ。ジョーがこんな作品を書いたらマーチ夫人はジョーを勘当して家族の聖書から名前を消すだろう。
ある意味、陳腐な展開なのだけど、人物像がしっかりしているので、それなりに楽しめる。
『愛の果ての物語』では、まだ、可憐なヒロインに涙をこぼせるが、このヒロインには同情など似合わない。
ヒロイン、ジーンはとても強い女だ。頭が切れ、意志が強く、粘り強い。欲しいと思ったものは手段を問わず手に入れる。オルコットが生きた時代には珍しいタイプだったのではないか。『若草物語』のベスと対極にあるような人物である。
あまり知られていないが、オルコットは晩年、フェミニストの運動に近づいていたそうだ。この作品を読むと、それも納得できる。オルコットは単なる道徳家ではなく、女性の力を信じていたのだ。
モンゴメリも牧師の妻という縛りがなければ、このような作品を書きたかったのかもしれない。
わたしはこの作品はおもしろいと思うけど、『若草物語』を書いた人としてオルコットを崇拝している方には衝撃が大きすぎて受け入れがたいかもしれない。性的な描写こそないが、道徳的とはいえないし、今どきの風潮から見ても、ここまでするかというところがある。オルコットという作家をどうとらえるかによって評価が分かれる作品かもしれない。
2005年08月03日
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