2005年06月16日

『ひとりで歩く女』ヘレン・マクロイ 宮脇孝雄訳

"SHE WALKS ALONE" Helen McCloy
創元推理文庫 ISBN:4488168035

「誰かがわたしを殺そうとしています。何者かはわかりません。証拠もないのです。」謎めいた書き出しの手記から物語は始まる。西インド諸島のむっとするような熱気とけだるさの中で交わされる奇妙な会話。船旅での一風変わった同行者たち。何かにつけねらわれているような恐怖感をはらみながら、物語はアメリカへと舞台を移し、展開していく。

 サスペンスの古典とされている作品である。緻密な構成、幻想的な描写、息詰まるほどの緊張感――

 確かにおもしろかったし、優れた作品だと思うが、途中で犯人がわかってしまったのが興ざめである。

 これまでミステリはそれなりに読んできたが、犯人を当てたことは一度もなく、いつも最後まで騙されている。それが癪だったり、おもしろかったりで、実はそういう駆け引きを楽しんでいたりする。

 今回、初めて当ててしまい、嬉しいと言うよりちょっとショックを受けている。結末で思いっきりびっくりさせてもらえると期待していたのだが。すれた読者になってしまったみたいで、ちょっぴり寂しく感じている。

 犯人がわかったところでおもしろさが全くなくなってしまうわけではない。とりわけ、前半の西インド諸島での場面や船旅の場面は読み返したくなるほど趣があった。
『家蝿とカナリア』は本格推理ものとされているのだけど、ヘレン・マクロイは論理より描写で読ませるタイプなのかもしれない。
posted by 如月 at 14:29| Comment(0) | TrackBack(0) | M | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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