2005年03月10日

『霧のとばり』 ローズ・コナーズ  東野さやか訳

"ABSOLUTE CERTAINTY" Rose Connors 二見文庫 ISBN 4576042408

 マサチューセッツ州、ケープコッドの小さな町チャタム。大西洋に臨むこの町は霧の町でもある。昨年の戦没将兵追悼記念日(メモリアル・デー)の夜明け、この町の浜辺である若者の遺体が発見された。

 証拠もあり、目撃者もある。だが、陪審員による評議は膠着状態に陥る。出された評決は「有罪」。だが、その直後、新たな死体が発見される。冤罪か、模倣犯か。事件を担当する検事補マーティは公選弁護士ハリーとともに真実を追う。

 緊迫した法廷シーンとそこに生きる人々の姿は、R・N・パターソンを思わせるが、ローズ・コナーズはそこにきめ細やかな情感と繊細な自然描写を加え、読者の心を揺さぶる。ミステリを読んでこれほど泣かされたのは初めてであり、今もさまざまな場面が心の中に去来している。長く余韻が残る作品である。

 チャタムといえば、T・H・クックの『緋色の記憶』("THE CHATHAM SCHOOL AFFAIR")で印象深く描かれているが、この作品もまた、チャタムという小さな町ならではの物語である。『霧のとばり』という邦題は、霧に包まれた町チャタムをあらわし、また、人の心を包む霧、司法の霧をもあらわしているように思われる。そのとばりの向こうには……。題名もまた、忘れがたい印象を刻む。

 ローズ・コナーズは法曹界出身で現在は夫と2人の息子とともにチャタム在住。マーティ・ニッカーソン・シリーズは3作目まで発表されているとのこと。シリーズとおしての邦訳が待たれる。

 2003年MWAメアリ・ヒギンズ・クラーク賞受賞。
posted by 如月 at 15:41| Comment(2) | TrackBack(0) | C | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
如月さん

 ホント、泣けました〜。
Posted by 青縁眼鏡 at 2005年03月10日 19:59
泣けましたよね〜。

青縁眼鏡さんがミステリ引用コレクションに書かれていた場面はもう号泣ものでした。
http://www.litrans.jp/c-board/c-board.cgi?id=17

シリーズ全部読んでみたいですね。
Posted by 如月 at 2005年03月10日 20:18
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