2005年03月04日

『代価はバラ一輪』 カドフェル・シリーズ エリス・ピーターズ 大出健訳

"THE ROSE RENT"

 町一番の服地屋の跡取り娘ジュディス・パールは夫の死後、住んでいた門前通りの家を修道院に寄贈する。その家は青銅細工師のニールに貸し出され、家賃は聖ウィルフレッドの祭壇を照らす灯りに使われることになっている。代価は庭に咲く、最も美しく、香り高いバラを一輪、聖ウィルフレッドの移葬祭の日に受け取ること。

 幼い頃から修道士になるために修道院に預けられていたエルーリックがこの3年、祭りの日にジュディスにバラを届けに行っていた。美しいジュディスに許されぬ想いを抱き、苦しむエルーリックに代わり、ことしから店子のニールがバラを届けることになった。その矢先、庭のバラが無惨に傷つけられ、その根本にエルーリックの遺体が横たわっているのが発見された。

 若き修道士はなぜ殺害されたのか? だれが殺したのか?  手がかりもつかめない中で、ジュディスが失踪し、第2の殺人が起こる。

 亡き夫と授かることのなかった赤ん坊を思い、修道院に入ろうと思い詰める若く美しいジュディスはまた、裕福な未亡人でもあった。夫と暮らした思い出にあふれた家を寄贈し、その対価をバラ一輪としたジュディスの切ない思い。そんなジュディスに思いを寄せる男たち。さまざまな人の思いがバラのような女性、ジュディスをめぐって交錯する。

 悲しみに見舞われながらも、まっすぐ生きようとするジュディスに心打たれ、ジュディスを見守る控えめだけど、温かな眼差しに救われるような気がする。甘やかなバラの香りに包まれたような、そんな読後感を楽しめる1冊である。



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