2005年03月04日

『昏き目の暗殺者』マーガレット・アトウッド 鴻巣友季子訳

[書名]    『昏き目の暗殺者』(The Blind Assassin)
[著者名]    マーガレット・アトウッド(Margaret Atwood)(訳:鴻巣友季子)
[発行年月日] 2002.11.20
[出版社]    早川書房
[ISBN]     4-15-208387-5 C0097
[定価]     3400円
 
 釦工場主の娘、アイリスとローラ。八十二歳になったアイリスが語る回想と新聞記事、二十五歳で車ごと橋から転落して死んだローラが書いた物語『昏き目の暗殺者』が交互に語られていく。

 歴史の中で没落していく一族の物語であり、時代に流されつつ生きた女性の一代記であり、不審な死をめぐるミステリであり、その中に裕福な人妻と逃亡生活を送る男との人目を忍ぶ逢瀬、そこで男が寝物語に語る、ざらざらした紙の感触まで伝わってきそうな安物SFを含むという複雑な構造である。だが、いったん物語の世界に入ってしまうと、魂まで奪われてしまいそうなほどの引力があり、途中で止めることなどできなくなってしまう。

 作中作『昏き目の暗殺者』で語られる、安物っぽいSFがおもしろい。トカゲ男や桃女もばかばかしくていいけど、とりわけ惹かれるのは、舌を抜かれた生け贄の乙女と盲目の暗殺者のほのかなロマンス。この生け贄の少女とローラが重なって見える。だとしたら、盲目の暗殺者とは誰? 地界の王とは?

 昏き目なのはだれ? 暗殺者とは?

 読み終わったとき、語り手の老女の言いようのない悲しみや孤独が伝わってくる。

 手織りの絨毯のように一分の隙もない構成で物語の世界を堪能させてくれると同時に、生きることについても考えさせられる作品である。  

posted by 如月 at 13:50| Comment(0) | TrackBack(0) | A | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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