ジュディからリペット元院長の後任としてジョン・グリア・ホームの院長を任されたサリー・マクブライドはメイドのジェーンと愛犬
リペット院長のやり方を踏襲することしか考えない職員、遊ぶことも知らない孤児たち、そして何より手強いのはホームに派遣されたマクレー医師だった。サリーの支えはワシントンにいる議員である恋人ゴードン氏。
いやいやながら院長を引き受けたサリーだったが、子どもたちと暮らす中でいつしか理想的な孤児院運営に向けてホームの改革に取り組み始める。ぶつかり合いながらも、マクレー医師とサリーは子どもたちの幸せという共通の目的に向かってともに手を取り合うようになっていった。
だが、改革はすぐには進まない上、マクレー医師はなぜかサリーを避けるようになる。自信をなくしたサリーはゴードン氏の強引なくらいの求婚を受け、婚約する。
そんなある日、思いがけない事件が起き――。
"DADDY-LONG-LEGS"と同じくイラストは素朴で懐かしく、サリーの手紙から結婚後のジュディの生活がかいま見えるのはおもしろい。
とりどりに個性的な孤児たちだが、その中でも、サディ・ケイトの存在感が圧倒的。アレグラたち3兄妹のエピソードも心に残る。
題名の"DEAR ENEMY"はマクレー医師のことのようだ。赤毛でアイルランド系、元気いっぱいのサリーに対してスコットランド出身で笑顔一つ見せない悲観的な医師マクレー。マクレー医師に対してサリーの気持ちが動いていくところはなかなか読みごたえがある。手紙の宛名が変わっていくことにも注目したい。
どーんと大きな建物に全員を詰め込むのではなく、グループホームのような家庭的な雰囲気での生活を目指すサリーの改革案にはもろ手を挙げて賛成する。この物語が書かれた時代(1912)を考えると、これは画期的な考えであると驚嘆している。
だが、知的障害についての偏見はいただけない。知的障害者には子どもを産ませてはならないなんていうのは優生思想そのものだ。時代背景がそうであったのだろうが、やはりそういう考え方には抵抗を感じる。
だれもが望むであろう華やかな将来を約束するゴードンとの婚約後、自分の気持ちを見つめ直すサリーに現代にも通じるものを感じた。そして、最後は自分で決断を下し、責任を引き受けるサリーは好感の持てる、応援したくなる存在である。サリーの書いた最後の手紙は心を打つ素晴らしい手紙だった。
結末は予想どおりだったが、そこに至る過程はなかなか読みごたえがあった。よくある展開だが、その処理の仕方がいい。今後への希望を抱かせてくれた。
『あしながおじさん』ほど一般受けはしないかもしれないが、こちらの方が好きかもしれない。原書、訳書ともに入手しにくいようだが、機会があれば一読をお勧めしたい。
原書マラソン 588/10000


コドモの頃訳書で読みました。『あしながおじさん』のほうは細かいストーリーを覚えていないのに、こちらのほうが印象に残っています。「ジュディ、あなたには2通手紙の貸しがあってよ」なんていうセリフがあったような。そうか、返事がこなくてもどんどん手紙出しちゃうんだ、と新鮮に思ったことを覚えています。あと、スコットランドなまりを揶揄するところも。
犬の名前は「シンガポール(愛称シング)」だったと記憶していますが、原書と訳書で違うんでしょうか。
こちらの本、読まれている方は少ないかなと思っていましたが、結構いらっしゃるのかもしれませんね。わたしは『あしながおじさん』の続きがあるとは聞いていましたが、読んだのは初めてなので、ずっとほったらかしにしてきたお約束を今やっと果たしたような気がしています。
スコットランド訛りとアイルランド訛りの応酬、おもしろかったですよ??。どっちがどっちなのか、よくわかっていませんが(^^;) サリーの手紙の文章も少しずつ変わっていっていました。どちらに傾斜していったかは??
> 犬の名前は「シンガポール(愛称シング)」だったと記憶していますが、原書と訳書で違うんでしょうか。
これはわたしが間違えました。ボリスはついさっき読んでいた本で出てきたイヌです。「シンガポール(愛称シング)」で間違いありません。こっそり訂正しておきます<(_ _)>
先日読んだオルコットの"LITTLE MEN"ではお料理番の名前がAsia、こちらではイヌの名前がSingapore。このころ、こういう名前が流行っていたのでしょうか。
調べてくださったのですね! ありがとうございます。
南北戦争から第1次世界大戦までのこのころ、アジアへの関心が高まっていたのかもしれませんね。クリスティやモンゴメリにも「キモノ」なんてのが出てきますね。部屋着として着ていたようです。
このブログ、みなさまのおかげで「翻訳に役立つかもしれない雑学ブログ」になってきたような(^^;)
わたしが原書を探していたときはユーズドでしか入手できませんでした。たまたまですが、"DADDY-LONG-LEGS"と同じ出版社の本が手に入ったので、その点はよかったかなと思っています。
一部、時代的な限界を感じる場面もありますが、ウェブスターの持ち味であるユーモラスな筆致はこの作品でも存分に発揮されています。ぜひお楽しみください♪