2006年05月30日

『ぬきさしならない依頼』ロバート・クレイス 高橋恭美子訳

"FREE FALL" Robert Crais 扶桑社ミステリー
ISBN: 4594021026

 ロサンゼルスの私立探偵エルヴィス・コールの事務所に清楚な女性が訪ねてきた。ジェニファー・シェルダンと名乗るその女性は、婚約者が何らかの犯罪に関わっているような気がするので調べてほしいという。

 婚約者マーク・サーマンはロサンゼルス市警の私服部門リアクト・チームに最年少で抜擢された。チームに配属されて数カ月後、サーマンは何かに怯え、隠し事をしているようようだとジェニファーは言う。2000ドルを分割払いで受けとる契約を交わし、エルヴィスは調査に着手する。

 リアクト・チームについて調べ始めたエルヴィスは、逮捕の際死亡した黒人容疑者についてチームと容疑者の遺族の間でトラブルがあったことを知る。さらに、その裏には黒人ギャングの存在が見え隠れしているのに気づいたエルヴィスは相棒ジョー・パイクとともに、怪しげな取り引きの場に乗り込むが――。

 題材となったのはロスの黒人暴動だろうか。黒人同士が殺し合うむごたらしさ、そんな状況を何とかしようとする若者たち、その合間で保身と欲得に走る者たち。アメリカ社会の「今」が伝わってくる。

 エルヴィスがとにかくかっこいい。どちらかというと、サングラスの似合う寡黙な相棒パイクだけど。出だしはちょっと奇矯に思えたジェニファーだが、恋人を思う真摯な気持ちに打たれ、応援せずにいられなくなった。

 描かれている現実は重いけれど、文章は軽妙でリズミカルであり、ほろ苦さは残るもののカリフォルニアの真っ青な空のような爽快さとじんわりくる温かさにひたることができた。お気に入りのシリーズになりそうだ。 


posted by 如月 at 16:18| Comment(0) | TrackBack(0) | C | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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