2006年03月09日

『ナイン・テイラーズ』 ドロシー・L・セイヤーズ 浅羽莢子訳

"THE NINE TAILORS" Dorothy L. Sayers (1934)
創元推理文庫 ISBN: 4488183107

 大晦日の宵、車が故障したため、ピーター卿とお供のバンターは東アングリアの小村で年を越す羽目となった。その村フェンチャーチ・セント・ポールの教会ではその夜、9時間にわたる鐘鳴曲を演奏しようとしていたが、蔓延する流感のため鐘の鳴らし手が足りなくなっていた。鳴鐘術に覚えのあるピーター卿は助っ人を買って出る。

 春、フェンチャーチ・セント・ポール教会の鐘が9回鳴った。その九告鐘(ナイン・テイラーズ)は、赤屋敷の当主の死を告げた。当主の遺骸を先に亡くなった夫人の傍らに葬ろうとしたとき、その墓に見知らぬ男の死体が埋められているのが発見された。ピーター卿の名声を記憶にとどめていた老牧師は、卿の助力を願って再度の来村を要請する。求めに応じて村を再訪した卿は、かつて赤屋敷で貴重なエメラルドが盗まれたことがあったと聞く。見知らぬ男の正体は? そしてエメラルドはどこに? 低地地方の小村を舞台に卿の推理が展開される。

 とどろく水音、響く鐘の音が耳に残る。聖なる響きでありながらどこかまがまがしさを帯びた鐘の音。闇に沈む鐘たちは、まるで長い長いときを生きてきたかのようだ低地地方の教会でともに過ごしたひととき。人の力を超えた大きな力に突き動かされたような気がしている。 

 ピーター卿シリーズを読むのは『学寮祭の夜』『五匹の赤い鰊』に次いでこれが3冊目。『学寮祭の夜』でピーター卿ファンになったものの『五匹の赤い鰊』はいまひとつピンと来なかった。読めるかどうか確信が持てないままこの本を手にとったが、鳴鐘術の専門用語と人々の訛りに翻弄されながらも一息に読み、深い余韻を楽しんだ。

 どうやらわたしは、このシリーズでは蘊蓄系の方が性に合うようだ。

posted by 如月 at 16:02| Comment(0) | TrackBack(1) |
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Excerpt:            ドロシー・セイヤーズ  ホームズの学生生活については、『グ
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