2006年03月09日

『猿来たりなば』エリザベス・フェラーズ 中村有希訳

"DON'T MONKEY WITH MURDER" Elizabeth Ferrars
創元推理文庫 ISBN: 448815916

 トビーの元に異国風の筆跡で書かれた手紙が届いた。手紙には誘拐されたが自力で帰還した「わたしのアーマ」の身を案じ、助けを求める旨記されていた。気の進まないトビーだったが、ジョージに説得され、手紙の主ポール・ヴィラグの住むイギリス南部の村イーストリートに赴く。

 村はのどかに見えるが、どこか荒廃した雰囲気が漂っていた。ウィラグの屋敷に着いたトビーたちは、家の中で若いチンパンジーの胸にナイフが突き立てられているのを発見する。そのチンパンジーは、ヴィラグが手紙に書いていた「わたしのアーマ」だった。アーマに何が起こったのか?

 トビーとジョージ・シリーズ第4作。チンパンジーの誘拐殺害という風変わりな設定はおもしろい。イングランド南部のなだらかな丘陵地帯ダウンズの一見のどかだが、飲酒と近親交配の影響が濃い村という雰囲気もよく出ている。最後まで誰が犯人か悩ませる複雑なプロットもみごとである。

 だが、この作品は読み心地がとても悪かった。知恵遅れとされている登場人物に対する扱いが不快でたまらなかった。知的障害を演出に使われることに嫌悪感をぬぐえなかった。時代的に仕方がないといえばそうかもしれない。細かい点にこだわりすぎているのかもしれない。『ナイン・テイラーズ』の変ちきピークは気にならなかったのに、『猿〜』での描写が気にさわるのはなぜだろう? トビーとジョージのシリーズは大好きだが、だけど……。

 もしこの作品を最初に読んでいたら、フェラーズの作品はこれっきりにしただろう。そう思うと、『その死者の名は』から読んだのは幸運だったのかもしれない。

 2月に出版されたシリーズ最終作『ひよこはなぜ道を渡る』を読むのはもう少し先にしようと思う。
posted by 如月 at 15:43| Comment(0) | TrackBack(0) | F | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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