エリス・ピーターズ 岡本浜江・ 光文社文庫
ISBN: 4334761534
シュルーズベリーにある聖ぺトロ・聖パウロ修道院では、クリスマスを前に屋根の補修作業を強いられる。あまりの大雪のため屋根に穴が空き、溶けた水がたまたま滞在していた司教の使者めがけて降り注いだのだ。作業のさなか、ハルイン修道士が屋根から転落し、瀕死の重傷を負う。
死を覚悟した彼は、若き日の罪をラドルフェス院長とカドフェルに告白する。命をとりとめたハルインは罪を償うため、カドフェルも同行して、かつて暮らしたヘイルズの荘園に向かう。ふたりはさらに遠方のエルフォードへ足を伸ばすこととなる。
おおよその展開は読めるが、それでも楽しく読んでいける。そして、一抹の悲しさは残るものの、読後感はすがすがしく、希望に溢れている。これこそカドフェル・シリーズを読む楽しさといえよう。そこここに含蓄のある文章がちりばめられているのも嬉しい。
若き日の切ない恋、若者たちの一途な恋もさることながら、誇り高い奥方アデレーズの強さと翳りが属象に残る。エリス・ピーターズは年を重ねた女性の美しさを描くのがうまい。だから好きなのかもしれない。
そして彼女はまだ強く、わが王国をそうやすやすとは手放さず、出ていこうともしない。まだ生きつづけ、容赦なくおそいかかる老齢にあらがって、ついに死が彼女をうち負かし解き放つまで戦いつづけようとしている。231p

