2006年01月27日

『死者にかかってきた電話』ジョン・ル・カレ 宇野利泰訳

"CALL FOR THE DEAD" ハヤカワ文庫 ISBN: 4150401888
1961年CWAシルバーダガー賞(当時は次点)
 

 1月4日の深夜、英国諜報部員ジョージ・スマイリーは上司からの呼び出しを受けた。前日、彼がスパイ容疑で尋問した外務省事務官フェナンが自殺したという。フェナンは尋問に抗議する旨の遺書を残していたが、容疑が晴れ、和やかに別れたフェナンを知るスマイリーは釈然としないものを感じていた。

 調査を命じられ、フェナンの自宅に赴いたスマイリーは8時30分を告げるサーヴィス電話をとる。死亡当夜、フェナンが依頼したものだった。調査を進めるうちに、東ドイツ諜報部の影が見え隠れする。そしてそれは、1938年の夏の夜に、スマイリーを引き戻す――。


 1961年といえば、ベルリンの壁が築かれた年です。戦争の傷跡はまだ人々の心に生々しく残り、とりわけ、大虐殺を生き延びたユダヤ人たちの心の傷は深いものでした。そんな時代の雰囲気が伝わってきます。

 スパイものは苦手だと決め込んでいましたが、読み始めたとたん、簡潔で緊迫感溢れる描写に引き込まれました。優美で繊細なドレスデン人形に別れた妻の面影を重ねるスマイリーに、ぐらっときました。不細工な男なんですけどね(^^;)。

 ミステリ賞参加を決めた直後に買った本ですが、積んだままになっていました。もっと早く読んでいればよかった(『寒い国から帰ってきたスパイ』も読んだのに……)と、ちょっぴり悔しく思っています。
posted by 如月 at 20:24| Comment(0) | TrackBack(1) | L
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